むく と
けむりが わき
ぽをんときこえる
あざやかなまひる
井戸をのぞくなよ
さあ
ここで
かなしみは うごかなくなった
松かぜをきいて
こころがおどらぬ日はない
ふとい幹へ
ぢかに葉っぱがついていると
おかしくなる
かみさまは
せかいぢゆうの
すべての父よりもっと父だ
白くとけた鉄よりも
おほきな玉よりも
もっともっとしづかだ
原っぱの
まんなかにしやがんでいたら
まっくろけなばあさんば
かごをしょってとほりかかって
わたしをのぞきこんでいっちやった
まだじっとしてたら
とんぼがいっぴき
みし みし とうかんできた
わたしのそばにうかんでた
ねぶの木のようだが
もうすこし葉のひろい木だ
せいのぐっとたかいところから
まるで
みづがわきでるように
白いはなびらが
しんしんとながれてくる
まひるである
とんぼが
みし みし と
うかんでる
むぎの穂づらを
ながれてゆく風は
たかくなったり
しづんだりする
それならば
どうすればいいんだとおもふても
うかんでくるものはない
あめつちにいれがたき
うれいなり
いいものを
ひとの足もとへそうっとおいて
しらん顔をしてゐたい
しん刻で
みにくいよりは
浅ぱくでも
うつくしいほうがいい
へびが
でるかとおもふと
原っぱがこわい
しづかな空へ
ゆうぐれの
やわらかくひろい桐の葉は
しなしなとおよいでる
わたしは
くりくりの頭を
つるりとなぜてみた
なほ
古きことばのよろしさよ、
毛はなほ
こえもなく
かもなしといふ
ほむべきか ことばよ
つゆぐもりの日
まつの根かたで
まつかぜをきいてたら
くもが
ぐんぐんはれはじまった
まるで
まつかぜがはらすようだ