無題 夏目漱石 文部省の展覧会を見たが、まずいものだ。おもしろいと思われるものは二、三点しかない。年 に一度の展覧会があれでは心細い。文学のほうは、毎月出る雑誌の小説でも、あんなものではな い。あれを見ると、文学のほうがはるかに絵画より進んでいる。                            (明治四十一年十月三十日『国民新聞』)