夏目漱石氏の談片 夏目漱石  小説は現代において進歩したという者がある。さらばといって→訌鼻臼芝などは捨っべきも のでない。今日英国に続々出る小説もつまらないものが多い。俳句は明治において進歩したに相 違ないが、さらばとて|芭蕉《ぱしよう》や|蕪村《ぶそん》はやはり偉いのである。俳句の進歩した今日でも芭蕉や蕪村を 読まねばならぬように、今日でも→訌鼻霞諧は読むべきものである。  →訌岳輿昌の文章は実によく締まっている。巧みなものである。じぢ訌言の文章はおおざっぱ で、一,訌鼻4諧に比べるとはるかに劣っている。作中の0プ詈琴帚目でも、→訌。寄冖昌のほうが よく描かれている。                           (明治四十四年七月十五日『英語青年』)