http://www.aozora.gr.jp/cards/000129/card45225.html 文づかひ 鴎外  それがしの官の催したまひし星が岡祭篶の泌逸会に、津行かへりの 将校次を逐うてオの上ばなしせし時のことなりしが、こよひは右ん身 が物弼”くべき筈なり、吸下も待栄ねておはすればと促され紅、ま脈 大尉峰なりて程もあらじと見ゆる小林といふ珍年士官、回に螂べし巻 姻草取りて火体の中へ灰撮り畜して、語りは姶めぬ。  わがザツクセン阜団につけられて、秋の漬習にゆきし折、ラアゲキ ツツ村の辺にて、対抗は既に果て、仮設政を攻むべき目とはな妙細。 小高き丘の上に、まばらに兵を配りて、祓と定めおき、地形の波面、 木立、固合家などを巧に楯に取りて、四方より攻寄するさま、めづら しき壮個なりければ、近郷の民こゝにかしこに群をなし、中に雑りた る少女等が思天詞絨の胸当晴れがましう、小皿伏せたるやうなる竈狭 き笹拠”花挿したるもをかしと、螂べし目がね忙はしくかなた二なた を見oらす程に、向ひの岡なる一群きは立てゆかしう覚えぬ。  九月はじめの秋の空は、けふしもこゝに稀なるあゐ色になりて、空 気透徹りたれば、残る限なくあざやかに見ゆる二の群の真中に、馬卓 一口停めさせて、年君き貴好人いくたりか桑りたれば、さまム\の衣 の色相映じて、花一簑、にしき一団、目もあやほ、立ちたる人の口帯、 昔套人の帽の雲姜一曇らくと吹暴し言。その竃馬 立てたる白髪の翁は角拍紐どめにせし急の猟人服に、うすき楊いろの 帽を戊けるのみなれど、何となく由ありげに見ゆ。すこし引下がりて 白き胸控へたる少女、わが目がねばしばしこれに留まりぬ。幻鉄いろ、 蒙く、今かなたの餐着、むらくと打毫套糞の曇しさ 見むとて、人々吸げどかへりみぬさま心悩し。 「殊なるかたに心留めたまふものかな。」といひて哩く我口を拍ちし 畏き八字轟の明色なる少年士官は、おなじ大隊の本都につけられたる 中尉にて、男爵フオン、メエルハイムといふ人なり。「かしこなるは 我が訟れるデウペンの城のぬしど^ロオ伯が一旗なり。本都のこよひ の宿はかの城と定まりたれば、君も人々に交りたまふたつきあらむ。』 と轟る時・翼言く塞葦に迫る寛て・ζル一イ怠臓 努りぬ。二の人と我が交りそめしは、まだ久しからぬ程なれど、誉き 性とおもはれぬ。 、  寄手丘の下まで進みて、けふの漬習をはり、例の害判も果つるほど に、わればメエルハイムと倶に犬隊畏の後につきて、こよひの宿へい そぎゆくに、中高に造りし「ショツセェ」遣美しく切抹残れる麦畑の 要う昔て、をりく書の耳に入るは、木立の彼方を流るニル デ河に近づきたるなるべし。大隊畏は四十の上を三つ四つも竈えたら むとおもはるゝ人にて、髪はまだふかき褐いろを失はれど、その赤き 疎㌍見れば、はや損の波いちじるし。質棲なれば言簑すくなき胆い二 冒三冒めには、「われ一個人にとりては」とことわる癖あり。竈にメ エルハイムのかたへ向きて、「薄がいひなづけの婁の待ちてやあるら む、」といひぬ。「許し玉へ、少佐の君。われにはまだ熾艶が妻といふ ものなし。」「さなりや。我言をあしう思ひとり玉ふな。イ、ダの君を、 われ一個人にとりては脈くおもひぬ。」かく二人の仇謂する間に、遣 はデウペン籔の前にいでぬ。園をか二める低き飲柵をみぎひだりに精 ひし義雌憂婆く、その呆つるきろ序裟る再義苓 て見れば、しろ木担の花咲きみだれたる臭にブ伯聖撞ル快る瓦葺の高’ どのあり。その商のかたに高き石の塔雲は壕及の尖塔塞らひて槌 れりと覚ゆ。けふの泊のことを知りて胆迎べし「リフレェ」宕たる下 敵に引かれて・白石外離かばりゆくとき、園の木立を洩るゆふ日朱の 臼くホく、,oの竈o置oりたろ人首竈オの「スフインクス」を照した り。わがはじめて入る独逸貴旗の城のさまいかならむ。さきに遠く皇 みし馬上の美人はいかなる人にか。これらも皆解きあへぬ謎なるべし。  四方の壁と脅竈とには、皃神竜蛇さまム\の形を画き、「トルウ ヘト、いふ長柾めきたるものをとワーろム\に据ゑ、柱には刻みたる吠 の首、古代の楯、打物などを螂けつらねたる間、いくつか過ぎて、籔 上に引かれぬ。  ビユロ才伯は常の服とおばしき黒の上衣のいと竈きに着夏へて、伯 爵夫人とゝもにこゝに居り、かねて相訟れる中なれば、大隊畏と心よ げに渥手し、われをも引會はさせて、胸の底より閏づるやうなる声に てみづから名舎り、メエルハイムには「よくぞ決旺ひし、」と峻く会 釈しぬ。夫人は伯よりおいたりと見ゆるほどに漫屠Eけれど、こゝろ のoしさ目の色に曲でたり。メエルハイムを傍へ呼びて、何やらむし ばしさゝやく阻どに、伯。「けふの皮さぞあらむ。きかりて憩ひ玉 へ。」と人して部星へ誘はせぬ。  われとメエルハイムとは一つ部星にて東向なり。ムルデの河波は窓 の直下のいしずゑを洗ひて、むかひの岸の草むらば景まだあせず。そ のうしろなる柏の林にゆふ訟かゝれり・搬洲ての方にて折れ・こなた の塵謄がしらの如く出でたるところに田合家二三研ありて、真黒なる 紛ひき章の鶯梓蜜に錐え、ゆん手には水に鵬みてつき幽したる荷吸の 一間あり。二の「パルヨン」めきたるところの竈、打見る恨どに閑き て、少女のかしら三つ四つ、をり£なりてこなたを竈きしが、白き馬 に崎りたりし人はあらざりき。軍服ぬぎて口卓の傍へ仔参むとせしメ エ〃ハイムは、「かしこは着き螂人がたの屠間なり、拓礼なれどその 意の戸疾くさしてよ、」とわれに詞ひぬ。  日暮れて食堂に招かれ、メエルハイムと倶にゆくをり、「この家に 緒冷姫違の多きワーとよ、」と問ひつるに。「もと状臥ありしが、一人は 吾友なる7アブリイス伯に壕ぎて、のこれるは五人なり。」「フアブリ イスとは国務大臣の家ならずや。」「さなり、大臣の夫人はこゝのある じの姉にて、吾友といふは犬臣のよつぎの予なり。」  企卓に就きてみれば、五人の姫達みなおもひおもひの粧したる、そ の美しさいづればあらぬに、上の一人の上衣も裳も黒きを着たるξま、 めづらしと見れば、これなんさきに白き馬に崎りたりし人なりける。 外の姫たちは日本人めづらしく、伯爵夫人のわが軍服簑めたまふ冒蓑 の尾につきて、「黒き地に黒き紐つきたれば、ブヲウンシ呂ワイヒの 士官に似たり、」と一人いへば、挑色の顔したる末の姫、「さにてもな し、」とまだいわけなくもいやしむいろえ包までいふに、音をかしさ に堪へねば、あかめし顔を汁祖れる皿の上に低れぬれど、黒き衣の姻 は虜だに勵さvりき。暫しありて竈き堰、さきの罪蠣はむとやおもひ けむ、「されどかの君の軍服は上も下もくろければイ、ダや好みたま はむ、」といふを閂きて・黒き衣の姫振向きて睨みぬ。この目は常信 をち方にのみ迷ふやうなれど、一たぴ人の面に向ひては、言薬にも増 して心をあらばせり。いま睨みしさまば笑を帯ぴて呵りきと覚ゆ。わ ればこの未の姫の冒蓑にて知りぬ、さきに犬隊畏がメエルハイムのい ひなづけの妻ならむといひしイ、ダの君とは、二の人のことなるを。 かく心づきてみれば、メエルハイムが冒素も撮鼻も、この君をうやま ひ愛づと見えぬはなし。さては此中はビユロオ伯夫婦もこゝろに砕し だまふなるべし。イ、ダといふ姫は丈高く痩肉にて、五人の着き^螂 人のうち、此君のみ髪黒し。かの善くものいふ目を余所にしては、外 の姫たちに立ち二えて美しとおもふところもなく、眉の間にはいつも 聰少しあり。面のいろの蘂う見ゆるは、黒き衣のためにや。  食浪りてつぎの間にいづれば、こゝはちひさき座αめきたるところ にて、軟き椅子、「ゾフア」などの脚きはめて短きをおほく据ゑたり。 こゝにて班誹の饗応あり。給仕のをとこ小竈に境酎のたぐひいくつか 渉いだるを持てく。あるじの外には灘も取らず、た㌻犬隊長のみは、 「われ一個人にとりてはーシヤルトリヨオズ』をこそ、」とて一息に炊 みぬ。此時わが立ちし背の低の暗きかたにて、二個人、一個人」と あやしき声して呼ぶものあるに、おどろきて碩みれば、二の間の隅に はおほいなる竈がねの竈ありて、そが中なる螂鵡、かねて凹きしこと ある犬饒畏のこと薫をまねびしなりけり。姫違、「あな生oの^や」 とつぷやけば、大隊長もみづから二わ高に笑ひぬ。  主人は犬隊畏と巻烟草喫みて、銃狐の話せばやと、小o口万かたへ ゆく程に、わればさきよりこなたを打守りて、少らしζ日本人恒3の いひたげなる末の姫に向ひて、「二のさかし書■憾わん少の信や、』と ゑみつゝ問へば。暑、誰のとも良らねど、われも£でたきらのに「− そ思ひ侍れ。さいっ買までは、心あきたoひしμ、あ竈りに口れて、 オに繁はるものをばイ、ダいたく■べば、o人水舳㌦せつ。ワーのo〜 のみは、いかにしてかあの姉貢をoめるがこぼれ幸にて、今もoはれ 待り。さならずや。」と^“のかたへ首さしいだしていふに、姉貢仙 むてふoは、まがりたるoを開きて、「さならずや、さならずや」と 鶯返しぬ。、  二の瞼にメエルハイムはイ、ダひめの傍に屠寄りて、なに㌻をかこ ひ求むれ些、渋りてうけひかざりしに、伯螂夫人も冒藁を添へ玉ふと 見えしが、姫つと立ちて「ピヤノ」にむかひぬ。下都いそがはしくo をみぎひだりに立つれば、メエルハイムは「いづれの竈をかまゐらす べき、」と楽器のかたばらなる小卓にあゆみ寄らむとせしに、イ、ダ 姫「否、沁なくても」とて、おもむろに下す指尖木端に触れて螂すや 金石のコ。しらぺ鶯くなりまさるにつれて、あさ竈の如きいろ、姫が 聰豪に目れ来つ。ゆるらかに鐵尺の水晶の念珠を引くときは、ムルデ の河もしぱし流をとゞむべく、旭ち追りて刀む斉くoるときは、むか し行脈を膏しゝこの城の遠祖も百年の豪を破られやせむ。あはれ、こ の少女のこゝろは恒に狭き胸の内に閉ぢられて、こと葉となりてあら はるゝ便なければ、。その鶯々たる指頭よりほとばしり出づるにやあら む。唯坦ゆ、糸声の波はこのデウペン城をたゞよ倣せて、人もわれも 淳きつ沈みつ流れゆくを。曲正に竈になりて、この楽器の。フちに臼み しξまム、の舷の兇、ひとりム\に螂なき怨を翫へをはりて、いまや 篶・’。津雀ほべ宙言“、曝晒の簑専、げ  ,患寒るイ、財董、暫く心附かで雷し鮒、かの葛夏と 可に入りぬと鶯しく竈にしらぺを乱りて、楽器の賃も砕くるやうなる 青〜せξ屯、虞を臼ちたるおちては、常より否かりき。姫たち螂見合 ミ;奏獄の童套籔しけるよ。」き冬く雪に、若る衝 の冒竈えぬ。  主人の伯は小都巨より出でゝ、「物くるほしき、イ・ダが当座の曲 ○侭、いつものことにて珍らしからねど、君はさ二そ鶯きたまひけめ。」 とわれに会釈しぬ。  絶えしものゝ音わが耳にはなほ凹えて、多つゝごゝろならず都昼へ 以己が・こよ覧凹しことに心竈覧てい乏ら穿。床墓らぺ しメエルハイムを見れば、これもまだ園めたり。問はま恨しきことは εはなれど、流石に悼るところなきにあらねば、「さきの怪しき箇の 音は饒が出ししか知りてやおはする、」と岱にいふほ、易爵こなたに 向きて、「それにつきては一条のもの語あり、われもこよひは何ゆゑ か竈られねば、起きて語り閂かせむ。」と諾ひぬ。  われ等はまだ燈まらぬ臥床を降りて、まどの下なる小机にいむかひ、 翠脳与る奮・喜の箇の音、ミ募外にき皇、寧蔓 たちまち涜き、ひな鶯のこゝろみにoく如し。メエルハイムは■咳し て請りいでぬ。  「十年ばかり前の「−となるべし、二㌧より違からぬプリコ才ぜンとい 寿に憲芸る器り筈。六つ芸のξ暮の時奮棄蓼 ななくなりしに、欠唇にていと臼かりければ、かへりみるものなく恨 とほとαに迫りしが、ある日コ包の乾きたるやあると、此滅べもとめ  に来ぬ。その国イ、ダの貫はとをばかりなりしが、あはれがりて物と らせつ。現の箇ありしを与へて、『これ吹いて見よ、−といへど、欠 昏なればえ臼まず。、イ・ダの君、1あの見ぐるしき口なほして得させ よ、』とむつかりて止まず。母なる夫人與きて、幼きものゝ心やさし 、ういふなればとて匡師して螂はせ玉ひぬ。」 てあそびの箇を竈さず、簑にはみづから木を割りて笛を作り、ひたす ら吹きならふほどに、たれ敦ふるものなけれど、自然にか㌧る晋色を 幽すやうになりぬ。」 「一昨年の亘わが休暇たまばりて二㌧に来たりし員、籔の一虞とほ果 せむと出でしが、イ、ダの君が白き胸すぐれて疾く、われのみ心きゆ くをり、狭き遣のまがり角にて、かれ草うづ高く竈める荷單に泣ひぬ。 馬はおぴえて一医し、姫は辛うじて峻に二らへたり。わ泌すくひにゆ かむとするを待たで、窃なる高草の豪にあと叫ぶ戸すと凹く間に、羊 蓼宣菱ごとくに雌評り・姫竃&紗は腎号妻し穿空 此の宣小牧5のいとまだにあれは、見えが《れにわ泌跡’ふを、姫二 れより知りて、人してものかづけなどはし玉ひしが、いかなる政にか、 目蓼雪穿、書蒙套く蕃ξ二Σ豪笑養竃 て、あのれを螂ひ玉ふと知り、はてはみづから竈くるやうになり七が、 いまも遺きわたりより守ることを痘れず、好みて姫が住める都巨の竈 の下に小舟黎ぎて、夜も枯草の螂に眠れり。」  円き暴りて眠に就くころは、ひがし竈の磧子はや恨の膚うなりて、 箇の音も断えたりしが、この夜イ、ダ姫おも必に見えぬ0そのnりた る馬のみるく黒くな婁、怪しと書ひξく視窪・人の冨て 欠唇なり。されど夢ごゝろには、姫がこれに崎りたるを、よのつねの しく並べたるコ子なり。さてこの「スフインクス」の頭の上には、螂 篶止まりて、わガ固を見て呉ふさまいと旧し。 つとめて雪・蓼しあく窪・冒の轟熾か誓警・雌儔 ムルデの河づらに螂政をゑがき、水に近き“原には、ひと群の羊あり。 欝夢「キツテル」とい妻厘く・^きぱを書はした畫・身の 丈きはめて低きが、おどろなす赤2ムり乱して、手に持たるα面白け にOらしぬ。  この目は螂の功誹を都星にて炊み、牛頃大む畏と倶にグリンマとい ふところの鈍狐仲間の会堂にゆきて漬冒見に来たまひぬる国王の宴に あづかるべき筈なれば、正服着て待つほどに、あるじの伯は馬草を借 して陪の上まで見送りぬ。われば外国士官といふをもて、将官、佐官 をのみつどふるけふの会に招かれしが、メエルハイムは城に鐵りき。 田合なれど会堂おもひの外に美しく、企卓の器は王宮よりは二ぴ来ぬ とて、沈螂の皿・マイセン焼の嚇ものなどあり。この国のやき物は京 洋のを粉本にしつといへ些、染いだしたる草花などの色は、載邦など のものに似らやらず。されどドレスデンの官には、灼ものゝ間といふ ありて・支那日本の秘繊の熱抄ほかた鶯れりとぞいふなる・国王陛下 にはいま始めて酌見す。すがた貌やさしき白簑の翁にて、ダンテの 神曲釈したまひきといふ9ハン王のおん両なればにや、応籔いと 巧にて、「わがザツクセンに日本の公使oかれむをり柱、いまの好に て、おんオの来むを待たむ、」など竈に閂えさせ玉ふ。わが邦にては 旧書よしみある人をとて、御使螂ばるゝやうなる例なく、か、る任に 当るには、則にo歴なうては笛はぬことを、知ろしめξぬなるべし。 こゝにつどへる将校百三十余人の中にて、聰兵の胆むたる老将官の悦 きはめて螂但なるは、国あ犬臣フアブリイス伯なりき。  タ暮に域にかへれば、珍女等の笑ひさNめく声、石門の外まで凹ゆ。 “㍗むる亡ころへ、はや螂れたる末の姫定り来て、「姉貢たち「ク日 ケツト』の遊したまへば、おんカも螂になりたまばずや、」とわれに 螂めぬ。大隊畏、扁μ君の蠣£損じたまふな。われ一個人にとりては、 衣聰ぎかへて憩ふべし。」といふをあとに凹きなして竈行くに、尖塔 の下の目にて姫たちいま遊のユ中なり。芝坐のところ%に黒がねの 弓伏せてむゑおき、砒の尖もて押へたる五色の球を、小楓蠣ひてo様 に打ち、かの弓の下をくゞらするに、巧なるは百に一つを失はねど、 捌きはあやまちて足拝,ちぬとてあわてふためく。われも正剣解いて ワーれになりゼ打てども打てども、球あらぬ方へのみ飛ふぞ鉢竈なき。 姫たち戸を俳せて笑ふところへ、イ、ダ姫メエルハイムが肘に指尖㌫ けてかへりしが、うち螂けたりとカもふさまも見えず。  メエルハイムはわれに向ひて、1いかに、けムの竈むもしろ。か9レ や、」と問ひか吋て害を待たず、「われをも旭に入れ玉へ・」と,のか たへ歩みよりぬ。・姫違は唄見あはせて打笑ひ、「あそα信除1τ■みた り、姉ぎみと共にいづくへか往きたまひし、」と同へば、・『αoπちしよ き宕角わたりまでゆきしが、二の尖荘にほ着ゆず、。小‘wo咳腔螂目わ 珊針醗驚㌧総洪錺雛舳}雛欝以㌶㍊ をも見せ玉はずや、」といひぬ0  口虞きすゑの姫もまだ何とも害へ聰日に、「われ二そ」といひしは、 おもひも公肘ぬイ、ダ坦在り。oお阻くいはぬ人の酢ビて、伐ピ雌し しζと薫と共に、臼さと赤めしが、はや先ほ立ちて醐がに、われ心鵬 りつゝも竈ひ行きぬ。あとにては姫違メエルハイムがめぐりに纂まり て、「タ鶯までにおもしろき話一つ凹かせ玉へ、」と迫りたりき。  この塔は園に向きたるかたに、竃みたる四をつくりてその口を平に したれば、聰段をのぼりおりする人も、ほに立ちたる人も下より明に 見ゆぺければ、イ・ダ姫が事もなくみづから集内せむといひしも、濠 く怪むに足妄。姫凄とく走るやう曇の吉にゆミ、二套 を口みたれば、われも忠ぎて追付き、段の石をば先に立ちて螂みはじ めぬ。ひと足迎れてのほり来る姫の息源^りて苦しけなれば、あまた㌧ ぴ休みて、竈う上にいたりて見るに、こゝはおもひの外に広《、めぐ りに低き妖o千をつくり、中央に大なる切石一つ据ゑたり。  今やわれ下界を鶯れたる二の若のコにて、きのふフアゲヰツツの丘 の上より遙に初対面せしときより、怪しくもこゝろを引かれて、いや しき物好にもあらず、いろなる心にもあられど・ジに見・馳oおもふ 少女と差向ひほなりぬ。こゝより望むべきザツクセン平野のけしきは いかに美しくとも、茂れる林もあるべく、深き洲もあるべしとおもは る、二の少女が心には、いかでか着かむ。  εの口の只中なる切石に目うち掛け、かの物いム目のoをきとわが面  帰注ざしとεは、“ほ見ばえせざりし姫なれど、さきに少らし書空螂  のoかなでし吟にもタし毛美じきに“いかなればか、某の刻みし■上  ⑦石oに似たりとおも伏れぬ。 螂はζと竈硅uしく、「われ君が心を知りての周あり。かくいは㌻き ○のム帖じめて相見て、二と蓑もまだかばさぬにいかでと怪み玉はむ。  εれどわればたやすく応ふものにあらず。君漬習済みてドレスデンに  ゆき玉はゞ、王官にも招かれ国苗大巨の鎌にも迎へられ玉ふべし。」  といひかけ、衣の間より封じたる文を取出でゝわれに汲し、「呂れを  人知れず犬臣の夫人に届け玉へ、人知れず、」と頓みぬ。犬臣の夫人  はこの君の伯母御にあたりて、姉君さへかの家にゆきてカはすといふ  に、螂めて遣へること国人の助を借らでものことなるべく、また二の  ユの人に知ら廿じとならば、ひそかに郵便に附しても普からむに、か 皇象ねて秒郁な曇2した差を見窪・こ墨二差警套  ほはあらずやとおもはれぬ。されどこはた㌻しばしの“なりき。姫の  員娃螂くものいふのみにあらず、人のいはぬことをも能く閂きたりけ  む、分鐵の箒に謂を心ぎて、「フアブリイス伯爵夫人のわが伯世なる  ことは、”きてやおはさむ。わが姉もかし二にあれど、.それにも知ら  れぬを口ひて、君が仰助を借らむとこそおもひ侍れ。こゝの人への心  づかひのみならば、郭便もあめれど、それすら独則づること稀なる少  には・按ひがたきをおもひやり玉へ。」といふに・げに故あること本  らむとおもひて諾ひぬ。 入目は域門近き木立より虹の如く洩りたるに、河εたち添ひて、お 「はろけになる頃塔を下れば、姫たちメヱルハイムが竃きゝはて㌧われ  等を待受け、うち違れて新にともし火をかゞやかしたる食堂に入りぬ。  二よひはイ・ダ姫きのふに変りて、楽しけにもてなせば、メエルハイ  ムが面にも吾のいろ見えにき。 あくる螂ムツテェンのかたを「−ゝろざしてこゝを立ちぬ。 まドレスデン暴一 へりしかば、わればゼエ、ストラアセなる錆をたづねて、ききにフオ ン、ビュロオ伯が娘イ・ダ姫に吾ひしことを果εむとせしが、剛より と「−ろの習にては、冬になりて交ほの時節来ぬ内、かゝる貴人に遣は むワ、と奪籔らず、議の書套器の萬とい志、畜雀 なる一間に延カれて、名竈に撃染むることなればおもふのみにて属赤 ぬo  その年も隊務いそがはしき中に暮れて、エルペがは上涜の言消には ちす藁の如き氷塊、みどりの波にたゞよふとき、王官の冴年はな% しく、足もと危きo聰きの篭朴を餅み、国王のおん前近う遣みて、正 吸うるはしき立姿を拝し、それよりふつか三日コぎて、国筍犬巨ヲオ オース,,7 7 ’ ,, レ、フアプリイス伯の夜会に招かれ、4太和、がワリア、北亟米利加 杯の公使の良珍塁りて、人々二はり稟子に雌を下す竈を祓び、伯爵夫 人の傍に歩寄り、ぐのもと手垣に聰べて、首目好くイ、ダ姫が文をわ たしぬ。  一片中旬に入りて昇遺任命などほあへる士官とゝもに、臭のカん目 見えをゆるされ、正服宕て宮にウり、人々とoなクに一間に立ちて臼 仰を待つ恨どに、ゆかみよろぼひたる式都官に案内せられて妃幽でた まひ、式都官に名をいはせて、ひとりム、こと簑を卦け、予袋はづし たる右切艀の甲に凄吻せしめ錘仏。妃は簑思く丈低く、螂いろのo衣、 あまり見■せぬかばりには、戸音いとやさしく、「おんカは仏口西の 燃に功ありしそれかしが燃がりや、」な㌫魏げものし玉へば、いづれ 3蠣しとおもふなるべし。したがひ来し式の女官は臭の入口の目の上 まで出で、か苧に鐵みたる口を持ちたるoに直立したる、その姿いと いと気高く、鴨居柱むoにしたる一面の口図に似たりけり。われば心 とも沈くその面を見しに、二の女官柱イ、ダ姫なりき。こゝにはそも そも奈何して。  王都の沖快にてエルペ河を^ぎる錬oの上より箏めば、シユロス、 ガツセに跨りたる王宮の窟、こよひは殊亘にひかりか㌻やきたり川わ れも欽には洞れで、けふの2雲にまねかれたれば、アウグスツスの 広ワーうぢに余りて列をなしたる馬草の間をくゞり、いま玄関に債づけ 。にせし一籟より岨でたる貴婦人、毛草の口卦を脇助にわたして斡櫛の 螂トかく紀附、美しくゆひ上げた喝こがね絶ゆ髪と、まばゆきまで白 さ領とをコして、章の扉開きし剣口ぴたる吸守をかへりみもせで入り し簑て、その雷言し憲裏勵事、鋒綿豪藁婁暮 芸間毒貧、蓑そ套墓象た急菱の欝卒の前蚤 ぎ、赤き峰を一慨牝泌きたる大理石の階をのぼりぬ。階の両側のと二 婁、;に誤預竈望みど誰泊と嚢恢える「リフレェ」き て、“宗の袴を穿いたる男、項を屈めて螂もせず立ちたり。むかしは こ走著会のく手嚢書書しが、いま雫、慶長整 周ゐる㌍崇誇て、それ版みぬ。鵯去る窩毒は、い苛夢 存ぜる弔謹が謹の釜く光の警欝せ・姦らぬ撃・覆る し、赦珊の臼などを射て、祖先よ、の油固の肖像の間に籔まれたる大 饒最反至套、いへば謹なり・  弐部官が突く金螂ついたる杖、「バルケツト」の板に螂れてとう とうとoりひ㍑結ば、天鶯越ばりの昂一時に音もなくさとあきて、広 間のまなかに一条の道おのづか多開け、こよひ六百人と凹えし客、み な<の宇なりに身を曲げ、背の中程までも哉りあけてみせたる■螂人 の項ボ金糸の鶯漠様ある軍人の榛、また明色の高緒箕必の間を王泣の 」冷むりたまふ。兵先にはむかしなからの巻毛の犬仮婁をかぷりたる 合人二人、ひきつ㌻いて王妃両陛下、ザツクセン、マイニンゲンのよ つぎの君夫螂、ワイマル、シヨオンペルヒの両公子、これにおもなる 女官欽人随へり。ザツクセン王官の女官はみにくしといふ世のoむな し秘。を丁、いづれも顔立よからぬに、人の世の春さへはや過ぎたるが 多く、象に隻い雲て肋;く長ふぺ畠を、式な窪えも 竈さで出したるなどを、須螂しにうち見る。ほどに、心待せしその人は 映肘して、一行はや呆てなむとす。そのときまだ年着き宮女一人、 吸めきてゆたかに歩みくるを、それかあらぬかと打仰げば、これな んわがイ、ダ姫なりける。  王㌫広間の上のはてに往むき玉ひて、国々の公使、2た肚そ⑫爽人 などこれを囲むとき、かねて高廊の上に控へたる狙竈竈■“の竈人泌ひ と戸oらす岐とゝもに「ポロネェズ」といふ2眩じ竈9ぬ。u冨た“ 竃く事にあひての婦人の蓼言みて、ζ竃墓と早墓 り。列のかしらば早装したる国王、江衣の▼イ3ンゲシ会人臼竈竈、 つ㌻いて責帽の橘引衣を召したる妃ほあら竈v帖ρイるシゲンの公予 なりき。岱に五十対ばかりの列めぐ少竈は8些o、・坦に2のし“しつ 饒鱒麟“パ謡墓維屠らぐた、へ呉団蕎ひ ・二の吟ξΣの2蠣嫁じ宝りて、}¢たを三たろ中呆の公竈と昌 ろを、いと巧にめぐりありく〜見れば、む阻く性少年士官の官女£を あひ苧信したるなり。わ泌メエルハイムの見えぬはいかにとおもひし が、wに近術ならぬ士官はお版むね謂ψれぬものセと債りぬ。εてイ イダ姫の2ふさまいかにと、芝屠にて^^の俳oみる二、ちしてうち 竈りたるに、胸にさうぴの自寵を塙のきゝにむけたる阻かに、臼と い麦董の;も雲裏色責の養・狭き要くξ蒙鉦 まぬ鶯を薗きて、金則石のコ饒るゝあだし£人の胆のおもげなるを^ きぬo  時竈るにつれて“竈Uの火は次第に山灰の気にあかされて暗うなり、o 雲がくしたきて・雰吉島芸動“蓼套塞用雪。 前肇の間享にか主足言く?書套言ξ、蒙蓼 と阻りoぐるやうにして、小首かたぷけたる目二なたへふり向吋、な かば閑けるまひ扇に固のわたりを寿たせて、「われをばはや見忘れや し玉ひつらむ、」といふはイ、ダ姫なり。「いかで」といらへつ、、二 足三藷きてゆ窪・・かしこ葦騒の寛ミひじゃ、奉募 花返に知らぬ草木島峡など染めつけたるを、われに釈きあかきむ人お んクの外になし、いざ、」といひて伴ひゆきぬ。  ワては日方のoほ追付けたる自石のoに、代々の冒が美行に志あク が、。“の臼く白き、坑oの如く碧き、さては五色まばゆき螂ωのいろ 恋るな些、竈になりたる竈より浮きいでて美はし。されどこの宮居に ○れたるまらうど竈は、二よひこれに心留むべくもあらねば、前山螂 ξ裏文の言く見ゆるのみξ、足童ξξのほとく なかり竈。 ●ごの淡き地におなじいろのむきから草鶯幽したる畏蜥子に、堰杜水  いろざぬの£のけだかきカほ箏の、2の後ながらつゆ碩れぬを、カを ひねりてoざまに折りて属冴け、㌫に中の蠣の花混を扇の尖もてゆぴ  εしてわれに涌りはじめぬ0  「はや去年のむかしとなりぬ。ゆくりなく君を文づかひにし亡、ゐや 申すたつきを々ざりければ、わが少の“いかにおもひとり玉ひけむ。 εれど竈を螂悩の臼聰よりすくひいで玉ひし云、心の中には片時ら忘 れ侍らず。」  『鐵雌日本の^俗■きしふみ一つ二つコはせて院みしに、むん国にて はコの籟ぷ竈ありて、まことのo鼻らぬ夫o多しと、こなたの派人の  いやしむやうに記したるありしが、こはまだよくも考へぬ首にて、か  かることは二の吠竈巴にもなからずやは。いひなづけするきでの交竈 久しく、かたみに心の底まで知りあふ甲聾は否とも詣とらいはるゝ中 にこそあらめ、■篶仰問にては早くより目上の人にきめられたる夫o、  二、ろ合はでら詳きむよしなきに、目々にあひ見て忌むこ㌧ろ臼くき  で募りたる時、これに添はする貫εりとてはことわりなの世や。」  『メエルハイムはおんクが友なり。暮しといはど弁竈もやしたまばむ。 否、我とてもその戌なる心を知り、搬“くからぬを見る目なきほあら ねど、年貫つきあひしすゑ、わが聰にうづみ火ほどのあたゝまりも幽 来ず。た㌻灰ふにはゆるは彼方の螂切にて、ふた螂のゆるし\交瞭の ■一衰、かひな借さる、ワーともあれど、唯二人になりたるときは、家も回  もゆくかたもなう“貯せく覚えて、こゝろともなく太き息せられても、  かしら“くなるまで忍びがたうなりぬ。何ゆゑと問ひたきふな。そを ならむ。」 「あるとき父の後妖好きを覗得て、わがくるしさいひ出でむとせしに、 気色を見てなかば書はせず。1世に貴族と生れしものは、聰やまがつ などの如くわが儘なる振舞、おもひもよらぬことなり。血の宿の,は 人の柁なり。われ老たれど、人の情忘れたりなど、ゆめな思ひそ。向 ひの壁に掛けたるわが母君の像を見よ。心もあの貌のやうに厳しぐ、 われにあだし心お二させ玉はず、世のたのしみをば失ひぬれど、裳百 年の聞いやしき血一滴まぜしことなき家の誉はすくひぬ。』といつも 天青のこと琴茎らくしきに墨ミし乏、養てといは むかく答へむとおもひし略、胸にたゝみたるまゝにてえもめぐらさず、 唯心のみ弱うなりてやみぬ。」 「固より父に向ひて帖かへすこと薫知らぬ母に、わがこ\ろ明して何 票喜。乏ど婁の君窒言とて一茎欠言。いまく しき門困、血沈、迷信の土くれと矛磁りては、我oの中に投入るべき ところなし。いやしき恋にうき身竈さば、姫ごぜの恥ともならめど、 この習oの外にいでむとするを誰か支ふべき。『カトリツク』αの国 ほは尼になる人ありといへど、こゝ新汝のザツクセンにてはそれもえ ならず。そよや、かの雇馬敦の寺にひとしく、礼知少てなξけ知らぬ 宮の内こそわが家穴なれ。」 「わが家もこの国にて聞ゆる農なるに、いま螂ある国竃大臣フアブリ イス伯とはかさなる好あり。この享おもてより碩はNいと易からむと おもへど・それの喘はぬは父君の仰心うごかし螂きゆゑのみならず・ われ幽として人とゝもに政き、人とゝもに笑ひ、瓦償二つの目もて久 しく見らるゝことをoへば、かゝる蔓をかれに伝へ、これにいひ雌が れて、あるは撚められ・あるは勧められむ脇舳しさに埴へず。泌んや メエルハィムの如く心浅々しき人に、イ、ダ煙oひて遣けむとすなど と、おのれ一人にのみ係ることのやうにおもひ似されむこと口惜しか らむ。われよりの願と人に知多れで宮づかへする手立もがなとおもひ 悩む程恒、この国をしばしの宿にして、われ等を聰管の岩木などの争 、フに見もすべきおん身が、心の底にゆるぎなき誠をつ㌧みたまふと知 りて、かねて我オいと阻しみたまふフアプリイス夫人への消息、ひそ かに頓みまつりぬ。」 「されどこの一件のことはフアブリイス夫人こゝろに猛めて族にだに 知らせ玉はず、女官の聰貝あれはしばしの務にとて呼寿せ、陛下のお ん皇もだしがたしとて遂にと㌻められぬ。」 「うき世の波信た㌻よはされて泳ぐ術知らぬメエルハイムがごとき男 は、わが身忘れむとてしら髪生やすこともなからむ。唯病ましきはお ん身のやどりたまひし夜、わμ糸の手とゞめし童なり。わ泌立ちし後 も、よな《oをわが怠の下に繁ぎて臥しゝが、ある靭羊小屋の螂の あかぬにこ、ろづきて、人々岸辺にゆきて見しに、波虚しき螂を打ち て、哀れる性かれ草の上なる一枝の箇のみなりきと凹きつ。」 か言震るき姜の時謹が象εりて・はや竃の赫寧 なり、妃はおほとのごもり玉ぶべきをりなれば、イ、ダ姫あわたゞし く坐を起ちて、二なたへ差しのば゜したる右手の指に、わが膏螂る\と き,四の螂兵の間に設けたるタ筒に急くまらうど、群立ちて二、をo 貫。姫の憲その間隻じり、次雷書言ゆきて、言く人 の口のすきまに見ゆる・けふの聡於の水いろのみぞ名鐵なりける。 (明治二十四字一月)